「新春メッセージ ~AIを超え「ふるさと」を創れ~」
令和6年1月5日

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 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。年始の能登半島地震により被災された皆様、羽田空港の航空機事故に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。胸が痛む出来事から新しい年が始まりましたが、皆様にとって良い一年となる事を心よりお祈り申し上げます。
 さて、近年飛躍的にAIが進歩しています。その機能それ自体は人間に利するものと考えていますが、所詮道具であると割り切って使う事が重要であると考えています。AIの宣託が神格化される向きもありますが、その他人事でしかない客観性に隷属する事は「賢さ」ではなく「愚昧さ」であると肝に銘じるべきでしょう。AIは人間の知能を超えたかもしれないけれど、人間の「矛盾を包含しうる知恵」を持つには至っていません。例えば一つのホールケーキを分ける時、数学的に等分な分け方を良しとするのか、自分の取り分を小さくして他者の歓びを自らの歓びとするのか、人間的な答えは多様で豊かであると信じています。
 にもかかわらず、人間的な答えを必要としない分野では、人間の仕事はAIに移行する事は間違いないと思われます。また、それによって人口減少による労働力不足を補えると単純に計算する論調が主流です。残念な事に企業体の経営者の大半がその論調に同調するという経営劣化が現れています。株主利益至上主義に人間的な答えなど必要ないようです。
 かつての大店(おおだな)は、その家訓に「徳義は本なり財は末なり本末を忘るる勿れ」と示し、社会的公器としての商家の役割を伝承してきましたが、現在の企業経営者の大半は株主利益至上主義に傾いています。その必然的な結果として30年にわたり賃金は抑制され、その中で就業者格差は拡大しました。中下層の就業者はギリギリの生活の中で結婚、出産、育児といったサイクルを切り捨てなければならなくなりました。人口減少の根幹要因は「将来設計を描けない就労環境」にあるわけですが、人口減少問題の解決を労働のあり方に求めるのではなく、AIによる業務効率化に委ねようとしています。AIの進化は労働環境のさらなる悪化をもたらし、日本社会を支えてきた倫理観の綻びが現れ始め、崩壊が目前に迫っているように思えてなりません。
  その一方で人口推計見込みでは東京都の人口は増加するものの他道府県の人口は減少すると見込まれています。誘蛾灯のような華やかな消費に誘われ、労働者は自らの身を削る事を顧みないのでしょうか。人生を毀損し自傷が止められないほど愛に飢えているのでしょうか。
 ここで詩の一節を引用し、自らの将来を描くのを止めた人たちに呼びかけたいと思います。

「東京へゆくな ふるさとを創れ」       (谷川雁「東京へゆくな」より引用)

   少し大風呂敷を広げる事をお許しいただければ、当社の目指すところは「ふるさとを創る事、ふるさとを創る人を受け入れる産業を育成する事」であると考えています。収入総額が増えなくてもより豊かな生活の可能性が、地方にはある事を伝えていきたいと思います。
 対象とする産業は伸びしろの大きい観光業が中心となるわけですが、それ以外の産業も例外ではありません。自治体やそれぞれの地域を良くしたいと考える篤志家、志のある企業家と連携して、地域のためになる事業を行いたいという基本的な方針は変わりありません。
 昨年10月に、当社が事業主体となり、観光庁令和5年度「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の助成金により『「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の世界遺産登録に向けた地域資源の活用による”日本国のはじまりの地”魅力発信事業』として、ファムツアー及びそれに付随するイベントとして熱気球体験搭乗、ナイトマジックショーを実施しました。その中で、明らかになった課題について解決を図り、より多くの観光客に愛される地域を創り出す事が今年の宿題です。また、観光庁の地方再発見事業にも参画し、在住の地域を中心に新たな観光コンテンツの開発に取り組む予定でもおります。
 また、観光業のみならず異業種とのコラボレーションの中で事業の幅を広げていきたいとも考えております。
 ともあれ本年は、臥竜冲雲(伏せた龍が雲を従え天に昇る)の一年にしたいと考えておりますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

筆者拝