前回のコラムで「今後カーボンニュートラルな社会の構築に向け、より環境意識の高い社内文化が求められるようになり、自然豊かな地方での活動拠点を設け、社員を定期的にローテーションさせる事が環境コンシャスな社内文化醸成に向けた解決策の一つになる」と記しましたが、企業拠点を地方へ移行する流れは静かなトレンドとなっています。帝国データバンクの調べによれば「2021年1-6月間に判明した、首都圏外へ本社を移転した企業数は186社だった。6月時点で150社超となったのは過去10年間で初めてで、企業本社の首都圏外への転出の動きが加速している。」状況です。
また、内閣府が2020年5、6月に実施した調査によれば、東京23区に住む20代の人のうち35.4%の人が地方移住に関心を持っている事が明らかになっています。都市を生活の基盤とする限り持ち家は夢に近いし、通勤の苦痛のない地方移住に関心が高まっていると言えます。
企業にとってもオフィス賃料をできる限り削減したい、生活費の安い地域で給与や通勤手当をはじめとする諸手当を抑えたいというのが本音だと思います。その一方で、「だから本社を他の地方に移転する」と決断できる企業は少数派ではないかと思っています。真のデジタル化が実現しない限り、情報集積量は首都と地方では格段に違います。それゆえ多くの企業は、東京23区を飛び出す決断には至らないと推測しています。
だとすれば、都市から地方への流れは堰き止められてしまうのでしょうか?私はコロナ禍で定着したテレワークが解決を指し示すと考えています。本社機能を極小化しつつ、テレワークでできる仕事はテレワークでやる、在宅勤務を希望する社員は在宅勤務を、地方移住を希望する社員には地方拠点で就業させる、多様な働き方の選択肢を設定するべきと考えています。
地方に拠点を設ける事は、社員の希望に沿う選択肢であるとともに、少子高齢化の中で遠からず訪れる人手不足の時代に、地方に根差した採用を展開しうるという利点があります。
これらが地方に企業拠点、サテライトオフィスを設ける事をお勧めする理由であるとともに、環境問題に対処しうる感性豊かな人材を育成する方策であると考えています。
筆者拝